日本ではまだあまり馴染みのないファンクショナルトレーニング。このトレーニングはマシンを一切使わず、ほぼ自重トレーニングで動けるカラダを作るというもの。食事はプラントベースで、基本的に動物性タンパクに頼らない食生活。ウェイトトレーニングと肉食を敢えて捨てて挑んだ小田選手のボディメイクの秘密を探る。
動ける筋肉を作り出すファンクショナルトレーニング
― ファンクショナルトレーニングとはどのようなトレーニングですか?
簡単に言えば日常動作を鍛えるトレーニングです。日常動作ですから、歩いたり、走ったり、登ったり、ジャンプしたり、引っ張ったり、押したりという動作ですが、そういう動作そのものがスポーツにも生きてきて、各種目の動作を鍛えるトレーニングになります。
― ファンクショナルトレーニングは海外ではよくやられているトレーニングですか?
アメリカではそれなりに長い歴史があり、最近流行ってきているようです。日本ではまだ入ってきたばかりなので、まだあまり知られていないのが現状です。私が勤めているNEXT ではバーベルやダンベル、そしてマシンも全く使わず、ウェイト負荷は主にケトルベルで、その他はほぼ自重トレーニングとなります。
アメリカのLifeLineUSA というメーカーのトレーニング器具、例えばTRX に似たJungle Gym XT という自重を利用して行うエクササイズであったり、Power Wheelというアブローラーが大きくなったような器具では、グリップを手で握って、一般的なアブローラと同じ動きだけでなく、ペダルも付いているので脚で操作することもできるのです。これは単にローラーを転がすだけでなく、いろいろ幅広く使えるもので、アメリカでは体幹に一番効く器具と言われています。その他、BXT という器具ですが、プッシュアップのサポートなどに使う器具です。
あとは、バトリングロープという、綱引きができるくらいの大きなロープをバタバタさせて行うエクササイズもありますが、これは本当にきついトレーニングで、心肺機能を強化にはもってこいです。
― NEXT で行われている様々なトレーニングの概要をわかりやすく教えてください。
はい。大きく分けるとファンクショナルトレーニングと格闘技ですが、ウチではPXT というトレーニングが中心になります。PXT とはPerformance XtremeTraining の略称で、NEXT オリジナルのファンクショナルトレーニングになります。PXT では自重トレーニングをメインに、その他、ロープなどの器具を使ったエクササイズを組み合わせることにより、動ける筋肉、動ける理想的な身体作りをめざしています。
― NEXT の会員の皆様はジムに来て、それぞれ自分でトレーニングをするという形態なのでしょうか?
いいえ。基本的にはクラス制で複数の会員様と一緒にトレーニングを行います。1 クラス45 分くらいのプログラムになります。ファンクショナルトレーニングは結構ハードなトレーニングなので、一人でやるよりも集団でやった方がお互い励まし合い行うことができます。
― 小田選手ご自身のスポーツの経歴を教えてください。
私は小学3 年生からバスケットボールと野球を両方始めまして、中学に入ってから野球を選択して、3年間やりました。そして高校生になってから、今度は再びバスケをやるようになりました。高2の途中からはモデル・俳優業を始め、モデルなので身体を作らないといけないと感じ、21 歳の時に、ウェイトトレーニングを始めました。
しかし、その頃はまだ知識もなく自分の感覚だけで、週1〜2 回する程度でしたが、23 歳の時にあるトレーニーの方に「君は役者をやっているなら、もっと身体を鍛えなければダメだよ」と言われ、その方にウェイトトレーニングの指導をしていただきました。そこからようやく部位別に分けて本格的にトレーニングをするようになりました。
24歳の時にはアバクロのモデルを始めましたが、そこにはアメリカで本格的にトレーニングをしている仲間達がたくさんいたので、いろいろトレーニングに関する情報を得ることができました。そして昨年6 月にNEXTに入社してファンクショナルトレーニングに出会いました。
― ということはファンクショナルトレーニングの存在はNEXT に入社して、初めて知ったということですね?
はい、そうです。それまではアバクロで裸のモデルをやっていたので、見せる身体づくりの為にウェイトトレーニングをやっていましたが、今はそれだけでなく、動ける身体づくりに主眼をおいたトレーニングをしています。
ファンクショナルに変えてからも、私が思うにベストボディはバランスのとれた綺麗な身体だと思います。ウェイトトレーニングは筋肉を肥大させるし、綺麗な身体も作ることができますが、本来昔の人達はもちろんウェイトトレーニングもなくて、主に自重トレーニングで身体を作っていったと思いますし、本来人間が持つ、機能性を重視して、自然な物を食べれば綺麗な身体が出来るのではないかと考えるようになり、ベストボディのコンテストには他の人と違ってファンクショナルトレーニングで臨んでみたいと思いました。
昨年6月から12月の約半年間はウェイトトレーニングをやらず、ファンクショナルトレーニングのみで身体をつくりました。
ボディビルダーの皆さんがあれだけの身体を作るのは本当に大変だと思います。それは単に身体を大きくすることだけを目指しているとは思いません。身体の中の大きな筋肉だけでなく、全身の細かい筋肉まで意識されているということは素晴らしいと思います。私たちが行うファンクショナルトレーニングではボディビルダーのような身体にはなりません。
しかし、反面動ける身体になり、結果的にバランスのとれた綺麗な身体ができると思います。そういった事を考えると、ボディビルもフィジークもバランスのとれた身体が要求されますので、ボディビルダーの方もウェイトトレーニングにプラスしてファンクショナルトレーニングを取り入れていただくと、大きな筋肉の上に、バランスのとれた理想的な身体づくりをすることができるのではないかと思います。
― アメリカ生まれのファンクショナルトレーニングを行うNEXT のオーナーさんは日本人の方なのですか?
NEXT のオーナーは添野達一という空手家の方です。士道館という空手の団体の総帥が添野達一さんのお父さんの添野義二さんで、現在世界60カ国に支部を置く大きな組織です。
オーナーの添野達一は、空手とかその他の格闘技を長く行っていて、格闘技に活かせるトレーニングということで、ファンクショナルトレーニングにたどり着いた訳です。そして、赤坂に総合フィットネスジムということで、幅の広いクラス制のジムをオープンさせ、その後NEXT2号店ということで、このMitaka Baseを出店させました。出店するに当たって、ファンクショナルトレーニングと格闘技をメインとした新しい形のジムにするというコンセプトで作られました。
― 本格的な空手家の方がよくこのファンクショナルトレーニングに行き着きましたね。
そうですね。それは私も凄いと思います。また、PXT の考案者は笠原竜二というトレーナーですが、笠原トレーナーはハワイで中・高・大を過ごしてそこで、スポーツの基本を学び、日本に帰ってきて自分でトレーニングしていた時に、アメリカのMonkey Bar Gym というところで行われている、動物の動きを取り入れたトレーニングに関心を持ったということです。そのMonkey Bar Gym のオーナーのJon Hindsという方は、NFL やNBA 等でトレーニングコーチをするような凄く有名な方で、信頼度の高いトレーニングでした。
また、NEXTで扱っているLifeLineUSAの器具を開発したのはJon Hindsのお父さんです。そのような流れで笠原トレーナーが渡米してMonkey BarGymに出向き、数ヶ月修行をして、そこで資格を取得して日本に戻って来られました。それが今のPXTの原型となっています。
― 格闘技の方はこのようなトレーニングを積極的に取り入れているのですか?
格闘技の方もこれまではパワー重視でたいていウェイトトレーニングを行っていたと思いますが、最近アメリカではボクサーなど格闘家の方々もファンクショナルトレーニングを取り入れて良い結果を出していると聞きます。
日本でもそのような情報が入ってきているものの、実際それを行う場所がなかったり、指導者がいないという問題がありましたが、NEXT で今実際に数人の格闘家の方々がファンクショントレーニングを取り入れていますが、それらの選手は皆、身体が軽くなり今までより動けるようになったと言ってくださっています。身体のコネクト、つまり下半身の力をうまく上半身に伝えたりとかいったことが自然とできるようになります。