プロテインの飲み方とタイミング / ダイエットコーチに学ぶスポーツ栄養学 (1/2)
筋力トレーニングを始めると、誰でもほぼ例外なく興味を持つのがプロテインパウダーです。手軽に使える低脂肪なたんぱく源としては抜群に便利ですが、どうも誤解があったりうまく使えていない人も多いようです。いろいろな商品が発売されていて、何を買えば良いのか、いつ、どれだけ飲めばいいのか分かりにくいのも確かです。
サプリメントメーカーや販売店のサイトを見れば、タイミングやら吸収速度やら複雑で凄そうな説明がたくさん見られますが、実際どうすれば良いのか?今回はできるだけ簡単に効果の出るプロテインパウダーの使い方を紹介したいと思います。
プロテイン=たんぱく質
まず根本的なことですが、「プロテイン」は「たんぱく質」でしかありません。牛乳を飲んでも、魚を食べても、卵を食べても同じことなので、普段の食事で十分にたんぱく質を摂れていれば無理にプロテインシェイクを飲む必要はありません。
私が勧めている「除脂肪体重1キロあたりたんぱく質2〜3グラム」という摂取量は、ちょっと意識しないと毎日摂れない量なので、不足分を補うのにプロテインパウダーは便利です。
ただし、たんぱく源のひとつでしかないので、量もタイミングも普通の食事と同じように考えればOKです。逆に普段の食事と切り離して考えると「木を見て森を見ず」状態になって、報われない努力になる可能性が高くなります。
栄養管理の重要度ランキング
体形改善のための食事管理を考える上で、優先順位はハッキリしています。栄養管理は基礎を押さえる前に細かいことを気にしてもなかなか効果は上がりません。大事なところから確実に実践して行きましょう。
栄養管理の重要な土台になる「カロリー収支」と「三大栄養素」は結局食べる量です。(三大栄養素は何をどれだけ食べるかということ)プロテインと言うとすぐに飲む時間帯の話が出てきますが、1日全体で自分に合ったカロリーとたんぱく質の量が摂れていなければ、頑張って時間帯を工夫しても結果はついてきません。
自分に合った食事量は、今の体形(体重・体脂肪)と目標の体形によって決まります。まずは現状を知り、目標を立てて、何をどれだけ食べれば良いか考えましょう。
プロテインを飲むタイミング
この記事で本当につかんで欲しい内容はここまでですが、プロテインパウダーの話をすると切っても切れないのが時間帯の話です。ゴールデンタイムや血中アミノ酸濃度、アナボリックにカタボリックと専門的な言葉も出てきて、プロテインの情報収集をするとき読んでいて一番おもしろいテーマかも知れません。いろんな人がいろんなタイミングを勧めています。どれもそれらしい研究結果や理論がついていて、すべて無意味とは言いませんが、小さなポイントひとつを抜き出して大げさに語られている感も強いです。
「プロテインをタイミング良く摂れば筋トレの効果が倍増するかも知れない」と期待したり、「良いタイミングを逃したら、トレーニングが無意味になるかも知れない」と心配している人も居るかも知れませんが、そんなに大げさに考えると空まわりします。 さきほどのピラミッドにあるように、食事タイミングの重要度は4位ということを念頭に置いて読み進めてもらえればと思います。
朝起きたらプロテイン
夜寝ている間はたんぱく質を補給できないので筋肉が分解されている。朝起きたらまずプロテインシェイクで身体にアミノ酸を届けてあげようという考え方です。
この作戦が使えるかどうかは、前日の夜の食事内容によります。肉や食物繊維を含んだ野菜をしっかり摂っていれば、消化吸収に掛かる時間は長くなります。夜の食事量が多ければ多いほど、朝プロテインシェイクを飲む必要は無くなります。
私がダイエット指導に使っているリーンゲインズという方法では、プロテインシェイクも含めて朝は何も食べませんが、筋量が目立って落ちるということはありません。
トレーニング前にプロテイン
トレーニング中に筋肉が分解されるのを抑えて筋肉の成長を促すために、トレーニング前にたんぱく質を補給しておくという考え方です。
ここではトレーニング前に食事を摂ったかがポイントです。食事直後の激しい運動はトレーニングにも消化にも良くないので、ある程度時間を空けるようにしましょう。完全な空腹状態でトレーニングをするなら、トレーニング前にBCAAかホエイプロテインを飲む意味はあります。昼ごはんでしっかりたんぱく質を摂って、夕食前にトレーニングというような場合は特に必要ありません。
トレーニング後にプロテイン
トレーニングの後は筋肉の成長が進むので、終了後30分〜60分以内にプロテインを飲もうという一番人気の考え方です。
トレーニング後の栄養摂取は大切ですが、筋肉の合成はもっと長く続くのでトレーニング後1時間にこだわる必要はありません。また、食べ物の消化速度はお腹の中にあるものすべてがお互いに影響し合うので、吸収の速いホエイプロテインにこだわる必要もありません。
トレーニング後の栄養補給はたんぱく質が重要ですが、炭水化物を摂るのも大切です。プロテインよりも肉と白ごはんをしっかり食べましょう。
寝る前にプロテイン
夜寝ている間はたんぱく質を摂れないから寝る前にプロテインでしっかり補給しようという考え方です。よくカゼインが勧められます。
これも寝る前の食事内容によります。例えばトレーニング後に夕食で1日の摂取カロリーの50%分、肉・白ごはん・野菜を食べたとすると、かなりの食事量になります。野菜で食物繊維が十分摂れていれば全体の消化吸収にかなりの時間が掛かります。この段階で1日に必要なたんぱく質とカロリーが摂れていれば、そこにプロテインを足す必要はありません。
-
-
- アンディ・モーガン
イギリス出身のダイエットコーチ兼パーソナルトレーナー。日本在住で滞在歴は7年。フィットネス業界にはいい加減な情報やデタラメが多く、特に日本では本当に使える情報源が少ない現状を少しでも変えたいと、ウェブサイトを立ち上げて日本語・英語両方で情報を発信している。ボディビルダー、格闘家、一般トレーニーなどのダイエット指導を行う一方、その指導経験をガイドにまとめてウェブサイトで公開中。
フィットネス&ボディメイク情報誌
[ PHYSIQUE MAGAZINE 001 ]