角田信朗氏が自殺願望のあるボディビルダー役で迫真の演技。
そして、国内トップビルダー5名も出演した。
骨髄バンクへの理解を深める事の出来る映画「迷宮カフェ」がいよいよ3月7日角川シネマ新宿にて封切り。封切りにあたり、この映画のプロデューサー・橋口一成氏に作品の経緯、見どころ、撮影秘話などについておうかがいした。
角田氏演じる、斬新な役柄
― 内容が骨髄移植と命という重い題材を扱ったものですが、作品についてお聞かせください。
橋口 2年ぐらい前、帆根川廣監督からお話を頂きました。内容は、骨髄を提供するドナー側の気持ちの立場に立った作品になっています。その際、大きな社会問題になっている自殺をひとつのキーワードにして自殺志願者がドナーになったらどうなるかということを考えたのが監督でした。
婚約者に逃げられた女性、頭脳明晰で無差別殺人を企てた若者、そしてもう一人は、堅苦しくなくコメディ的な要素を取り入れたいという考えもあって、筋肉に命を捧げる人がいても面白いという発想から、監督なりに勉強研究してボディビルダーの世界を取り入れたのだと思います。
― では、帆根川監督の書き下ろしということですね?
橋口 そうです。KOTSUZUI EIGA PUROJECTという、映画を作る会の方々が、監督とその会の黒岩由香会長を中心に 立ち上げた企画です。黒岩さんの娘さんが血液の病気で亡くなられ、その娘さんの死を無駄にしてはならないという想いが込められています。骨髄バンクの存在を 若い人にも知ってもらうため、あまり堅苦しくない物語として見せたいという想いから、映画というエンターテイメントが選ばれました。
内容的にも、これまでの作品によくあった、難病もの的な患者側からの視点ではなく、骨髄を提供して患者を助ける側、つまり、ドナー側の気持ちの立場に立った作品になっています。その際、大きな社会問題になっている自殺をひとつのキーワードにして自殺志願者がドナーになったらどうなるかということを考えたのが監督でした。自殺志願者たちが他人の命を救うことで自分が癒され、自殺を考え直しもう一度人生をやり直すと考えた時に、そこにどういう自殺志願者がいれば面白いだろう、と考えたわけです。
婚約者に逃げられた女性、頭脳明晰で無差別殺人を企てた若者、そしてもう一人は、堅苦しくなくコメディ的な要素を取り入れたいという考えもあって、筋肉に命を捧げる人がいても面白いという発想から、監督なりに勉強研究してボディビルダーの世界を取り入れたのだと思います。
― よくそこに着眼されたと思うし、その役に角田さんを選ばれたこともベストだと思います。
橋口 私は見たこともない知らない世界でしたから、その設定は面白いと思いました。一般の人が見たらどういう反応があるのだろうかと、何の抵抗もなくこの決断を下しました。 そしてそのボディビルダーのキャスティングを相談している時、角田さんの名前が自然に上がった瞬間、その他の候補者の名前は必要なくなりました。 打診してOKが出れば即決のつもりでしたが、その通り、一発で快く引き受けてくださいました。角田さんは、ドラマなどでもシリアスな演技をされていましたし、この役は映画では大事な役どころなので、彼には適役だと感じました。
― 角田さんのキャラが強くあると思いますが、もしその役が角田さんでなければ、暗い方向へ映画もいってしまったのではないでしょうか。
橋口 私もそう思います。テーマが重いだけに、暗く狭い世界に、はまってしまいがちなところを、彼の演技とキャラクターが救って、その世界を広げてくれました。
― ボディビルという題材が、このような形で取り上げられたことは今までにないと思うし、すごく新鮮な感じを受けました。角田さん演じる心優しく気弱な松浦役は、思い悩んでいるけれど、暗い方向だけじゃない、何とも言えない絶妙さを感じます。
橋口 松浦さん(角田氏の役名)が、骨髄提供を受け病気が完治した患者さんから感謝の手紙を受け取り、号泣するシーンはグッとくるものがあると思います。
― そのシーンだけでなくキャスティングと演出の素晴らしさを感じました。現場の雰囲気はどんな感じでしたか?
橋口 いままでとはちょっと違う、地の角田さんの芝居ではなく新たなものにチャレンジしようという精神がありました。彼の存在は役柄だけではなく、撮影中も他のキャストが固くなっているとやわらげてくれたし、現場を引っ張ってくれるムードメーカー的な存在で、とても助かりました。
天国のアンディとベルナルドが呼んでくれた
― 撮影期間はどれくらいでしたか。
橋口 全国のたくさんの病院、薬局さんから少しずつ少しずつ協賛頂き、製作しましたが、決して製作は楽ではありませんでした。撮影期間は2週間弱でした。監督に充分な時間を与えられませんでしたが、その分、本読みという事前の準備には入念な時間をかけました。
― 資金はどのような活動で集められたのでしょうか。
橋口 私がその活動に携わっていないので、細かい事は分かりません。KOTSUZUI EIGA PUROJECTや監督が中心になって動いていました。
― とても素晴らしいテーマだけにいかにして一般に普及させるかですね。
橋口 筋肉を愛する方々の雑誌に取り上げていただけて嬉しいのですが、果たしてこの映画の内容がこの雑誌にそぐうかどうかはよく分かりません。ただ角田さん自らも言われているように、K1で活躍したお二人。血液の病気で亡くなられたアンディ・フグさん、自殺だったと言われるマイク・ベルナルドさんのお二人のことがあって、その二人が私をこの映画に呼んでくれた、だから天国から二人が応援しているという気持ちで演技した、という角田さんの言葉が印象的でした。まさにこの映画の2つのキーワードである、骨髄移植と自殺が重なった事も、彼のモチベーションを高めたと言えます。このつながりを大切にして、フィットネス業界の中でもこの映画の意義が広がっていってほしいと願っています。
― 自己鍛錬している人が追い込んで追い込んで毎日やっている中で壁に突き当たり、まさに松浦さんのようになる話はよく聞きます。骨髄移植も他人事ではなく、いつ何時自分の身に起こることかもしれない。そうした認識はカラダを鍛えている人なら、色々と考えている事でしょうし、命についても常に考えているので、この映画は興味の持てるテーマだと思います。
橋口 筋肉の衰えを感じるのは何歳からですかね?角田さんの役は53歳で、筋肉の衰えを感じ始めている設定です。実は骨髄バンクに登録できる年齢は55歳まで。あと数年経てば登録できず、人を救いたくても救えなくなる年齢に達します。そういう年齢に設定したのも興味深い点です。
― ちょうど角田さんも53歳、あのような肉体を持つ53歳はなかなかいませんし、はまり役でした。大会シーンの撮影に立ち会いましたが、本物のボディビルダーも登場しますね。
橋口 正直、撮影の時本物のボディビルダーを見て驚きました。クランクイン初日にボディビル大会のシーンを撮影しました。私がその撮影をする前の現場にいたら、マネージャーの方から連絡があって「ちょっと(角田さん)大変だから、撮影現場に入れますが、もう限界だからいつ撮るんですか」と。角田さんが限界まで鍛え、極限まで減量したため、車から這って現場までいく状態でした。急いで駆けつけると、見た瞬間本当に大丈夫なのかなと思いました。
― 2週間弱6キロという急激な減量をしたようですね。
橋口 そんなに急激に減量したことは知らず、もし知っていたらやり方を考えたと思いますが。我々には何も言わず自分の意思でカラダをつくって撮影に臨まれたのです。大丈夫ですかと訊ね、少し食べ物を食べてから臨んでもらいました。いきなり初日から事件が起きて撮影が止まるのかと思いました。それで急遽、スタッフに撮影の順番を変えて貰いました。その日一番最後だった大会シーンを入れ替えて前の順番にしたのです。そうしないと角田さんのカラダがもたないと思いました。そこまで入れ込んでくれたのは嬉しかったですが・・・。
― 一瞬のシーンだったかもしれませんが、あの時写真を撮っていて角田さんの表情には鬼気迫るものがありましたね。
橋口 もう少し予算があったら、大きな会場を借りて観客席を一杯にしてやりたかったです。
― 撮影後、角田さんがブログに書いていますが、本物のビルダーと同じ舞台に立てたことを誇りに思っているようです。あのシーンで自分も実際のビルダーになったと認識して臨まれていました。仕事を超越している感じでしたね。
橋口 心から喜んで撮影されていましたし、迫力満点で実際のボディビルダーさんの中に入っても一番目立っていました。
― あのときの選手はすべて日本のトップクラスの選手たちですが、まったくひけをとっていなかった。こうしてくれという指示がなくても自発的に挑んでいたのが印象的でした。
橋口 終わってからは食べまくっていました。毎日のように(笑)。その後は逆にゆるい感じを出していかなければならない設定でしたから。
― そうですね、あれは回想シーンでしたから。
橋口 ただ順番としてあそこから入ったのは良かったと思います。角田さんは異色の存在として際立っていました。
他人へ思いを馳せてもらいたい
― 骨髄バンクという言葉は知っていても具体的にどうしたらいいか分からないし、具体的な意識がまずありません。この映画を見て少し意識するだけでも違ってくると思います。
橋口 我々は筋肉の世界も骨髄バンクの世界もよく知りませんでした。人間は自分の知らない世界というか、他人の世界に興味を持つことは多くありません。自分が大事で他人がどう考えてどう生きようとしているかに想いを馳せることが少なくなっています。しかし、この映画を見て、人への想いを馳せられるようになれば、骨髄バンクへ登録して、他人の命を救うことにもつながります。
― 大まかな流れはカフェでの出来事が色々あって、最後に主人公が浜辺で女の子と出会うシーンがありますよね。
橋口 あの浜辺に来る女の子がとても大事な役で、あのシーンの意味をどれぐらいの人が分かってくれるかがポイントでもあるんです。この映画の深層の部分です。
― えっ、まだこんな展開があるの、幼少時代に何があったのと、サスペンス性もあり、予想のできない展開が待ち受けています。
橋口 あんまり話すとネタばれになりますが、まさに主人公とソラと呼ばれていた少女がカフェで話すシーンが、主役の関めぐみさんの芝居場でもあり、彼女が抱えてきたトラウマがどういう風に解消されていくかのクライマックスシーンです。私としてはそこで感動してもらいたいという場面です。その場面に重点を置いて脚本を作りました。
― 骨髄バンクを扱った映画という気持ちで見たので、そこまでの展開を予想していませんでした。
橋口 なんとか泣かせよう、感動させようという強引なシーンはないと思いますし、時間をかけて脚本作りをした効果は出ていると確信しています。
― 本当によく考えられた筋書きだと思いました。映画の公開についてお聞かせください。
橋口 3月7日から公開が始まります。東京、新宿を中心に、撮影地でもあった新潟、前橋の3カ所で スタートします。その次に、大阪、そして、札幌、名古屋、福岡でも上映されます。その7か所でお客さんがたくさん入ってくれれば、さらに全国へ大きく展開されていく事でしょう。たくさんのボディビルダーの方々、また身体を鍛えている人達が見てくれれば、嬉しいです。一人でも多くの人に骨髄バンクへの認識を持っていただければと思います。ゴールドジムさんには映画のポスターやチラシを置いていただいているので、ジムに来られた方はぜひ見て貰いたいです。応援のほど、どうぞ宜しくお願いいたします。
―とても素晴らしいテーマだけにいかにして一般に普及させるかですね。
橋口 角田さん自らも言われているように、K1で活躍したお二人。血液の病気で亡くなられたアンディ・フグさん、自殺だったと言われるマイク・ベルナルドさんのお二人のことがあって、その二人が私をこの映画に呼んでくれた、だから天国から二人が応援しているという気持ちで演技した、という角田さんの言葉が印象的でした。
―2週間弱6キロという急激な減量をしたようですね。
橋口 我々には何も言わず自分の意思でカラダをつくって撮影に臨まれたのです。その日一番最後だった大会シーンを入れ替えて前の順番にして、少し食べ物を食べてから臨んでもらいました。そうしないと角田さんのカラダがもたないと思いました。そこまで入れ込んでくれたのは嬉しかったです。
―撮影後、角田さんがブログに書いていますが、本物のビルダーと同じ舞台に立てたことを誇りに思っているようです。あのシーンで自分も実際のビルダーになったと認識して臨まれていました。仕事を超越している感じでしたね。あのときの選手はすべて日本のトップクラスの選手たちですが、まったくひけをとっていなかった。こうしてくれという指示がなくても自発的に挑んでいたのが印象的でした。
橋口 心から喜んで撮影されていましたし、迫力満点で実際のボディビルダーさんの中に入っても一番目立っていました。
―本当によく考えられた筋書きだと思いました。映画の公開についてお聞かせください。
橋口 3月7日から公開が始まります。たくさんのボディビルダーの方々、また身体を鍛えている人達が見てくれれば、嬉しいです。一人でも多くの人に骨髄バンクへの認識を持っていただければと思います。ゴールドジムさんには映画のポスターやチラシを置いていただいているので、ジムに来られた方はぜひ見て貰いたいです。応援のほど、どうぞ宜しくお願いいたします。
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