← 前へ戻る
今後の目標について
― アーノルドアマチュアで優勝を果たした現在、今後は世界各国の選手から目標とされ、追われる側になるかと思いますが、そのことについてどのように感じていらっしゃいますか?
例えば順位って、昨年は優勝したけど、今年は4位ということも多々あると思います。そして、毎回顔を合わせている選手はだいたい同じなので、他国の選手は友達みたいな感じなんですよね。
他の選手って自分の目標があって、他人というのにあまり執着しないんですよ。目標の方に執着するような形になるので、どちらかというと追われるということはあまりないと思っています。
― それでは、自分自身との戦いということになるのでしょうか。
そうですね。他国の選手はそのように思っている人が多いと思います。どちらかというと、期待されることでやりがいはすごく感じるんですよ。
ですが、「もう少し温かく見守って下さい」という感じもあります(笑)。やっぱり誰でもプレッシャーをかけられると自分で追い詰めてしまうこともありますよね。ただ、期待されないのもつまらないので、そのへんは逆にやりがいに思います。
あと実は「自分は天才だ」と思ってやっています。心の中でそう思うことで自分を奮い立たせているんです。やっぱりあるんですよ。「だめなのかな」「できないのかな」って思う時って。でも「自分は天才だ」と思っていると、自分はできるんだ!と思えるようになるんです。
ボディメイクって、理屈もすごく大事ですけどメンタリティの競技なので、気持ちがないとできないですよね。
― いつ頃からそのように自信を保てるようになったのですか?
2008〜2009年くらいからですね。ボディビルを続けていて、30歳近くなってきた頃に、いつしか吹っ切れたんですよ。どうせやるなら頑張ってやってみようみたいな感じで。
― 確かに、その頃から日本選手権で上位に入るようになってきましたね。
そうですね、よくなってきましたね。あと、色々試すうちに考え方がブレなくなってきました。よく人の意見は聞いたりするんですけど、ただそれによって悩んだり迷ったり、そういうのはしなくなりましたね。
― トレーニングは、人によって合う、合わないなどがありますからね。
トップの選手ほど、「これがいいけど、あれはだめだ」と言わないんですよ。「これもいいけど、これもありなんじゃない?」という、一応何でも受け入れるけど、まあ自分はこうやるよみたいな感じで、他人の理論を批判する人ってあんまりいないんですよ。
ボディビルの選手はそういった選手が多いですね。日本選手権のような大会に出ている選手で、上の方に残っているような選手は、そういう方が多いです。やっぱり、他人同士しっかり尊重しているような方が非常に多いと思います。
― まだ帰国して一週間も経っていませんが、今後の目標や予定していることはありますか?
世界選手権で優勝するというのが目標なんですけど、先ほども言った通り、自分の中での考え方としては、「こういう体になれないと世界選手権で優勝できない」というのがあるので、まずは自分がイメージする体になることが目標です。
― 7連覇がかかっている、日本選手権についてはいかがですか?
連覇はあまり気にしていませんが、勝たないと世界選手権に行けないのでやっぱり勝ちたいですよね(笑)。
― 順位ではなく、世界大会に日本代表として行く!という、その先を見据えているのですね。
もちろん、国内大会もレベルの高い方達が多いので、頑張らないと勝てませんからね。手を抜いて勝てるほど、甘い大会ではないので。
なんとこの日、ジムのスタッフと会員の皆さんから、今回の優勝を祝福するメッセージを集めたTシャツがプレゼントされた。
― 現在、ゴールドジムでマスタートレーナーとしてご活躍されておりますが、トレーナーとしての目標はいかがですか?
引き続きボディビルを通じて、ウェイトトレーニングの普及に少しでも貢献したいと思っています。
三年前と比べると認知度は上がってきたと思うんですよね。一日のお客様の来館者数が50〜100人ほど増えて、全体の会員数も100人くらい増えてるんですよね。特に若い女性のお客様とか、男性も大学生くらいの若いお客様が増えて来ています。
やっぱり、ベストボディ・ジャパンとかボディビルではない形の大会が増えてきたからだと思うんですよね。同性目線で「あんなふうになりたい」という視点でいうと、まさにフィジークなんてそうですよね。同性目線で見るとカッコイイと思う人は多いと思います。
昔はボディビルというと、「かなり努力しないと難しいんじゃない?」と思われていましたが、フィジーク選手のような体だったら比較的目指しやすいというのは明確になってきていますからね。
そして最近では、ボディメイクの情報がインターネットを通じて、誰でも手軽に入手できるようになってきたと思います。ですから、フィジーク・オンラインさんのようなトレーニングの情報サイトがあると助かりますよね。
10年前なんかは、今ほどインターネットが普及していたわけでもないし、SNSの種類も少なかったので、現地に行かないと情報が得られませんでした。例えばアメリカにトレーニング修行に行くみたいな感じですね。
今は少し寂しいかな、そういうことはほとんどなくなりましたけど、インターネットで情報を仕入れることができるようになったというのも、ボディビル・フィットネスの普及に与える影響は大きいのではないかと思います。
意外と手軽にボディメイクできるようになったというか。ゴールドジムも情報が少ない頃は、敷居が高いと言われていましたからね(笑)
― 最後に、フィジーク・オンラインをご覧の皆さまにメッセージをいただけますでしょうか。
なりたいと思う体は度が過ぎなければなれると思います。なかなか筋力が発達しないという方は、どこかに必ず原因があります。
「なれないんじゃないかな」と自分でストップをかけずに、自分の可能性を信じてトレーニングし続ければ、イメージする体になれると思います。だから諦めずに頑張りましょう!
なんか、こういうの苦手なんですけど(笑)。ですが、自分の可能性を信じて努力すれば、目標とする体になれるので頑張りましょう。僕もそう思ってやっています!
アジア人は欧米諸国の選手と比べて体格が小さく、世界に挑戦する難しさがあると言われている。今回優勝した鈴木選手はアジア人であり、そして何よりナチュラルで80kg級という軽量とはいえない階級で戦い、優勝を手にした。
このことは、日本人選手だけでなくアジア各国の選手にとっても、世界大会に挑戦することへの大きな希望となったのではないだろうか。
今回、アメリカから帰国して一週間も経っていなかったが、疲れた表情一つ見せずに快く取材に応じてくれた鈴木選手。彼の表情は、終始とても生き生きと輝いて見えた。
普段、“筋肉”そのものに馴染みのない者にとっては、ボディビル競技者の勇ましい体格を目の当たりにすると、その近寄りがたさに思わず身を引いてしまいたくなるだろう。
しかし、この記事を通じて、ボディビルダーも他競技のアスリート同様に、ストイックな食事とトレーニング、そして強いメンタルが必要であることを知っていただけたら幸いに思う。
さわやかな笑顔に強靭な肉体というギャップを合わせ持つ鈴木選手の今後の活躍に注目だ。