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トレーニー必読!バルクアップを望むなら「たんぱく質」の性質を知ろう!



それでは、私たちの体に必要な様々な栄養について述べていきましょう。ここではたんぱく質についてお話しさせて戴きます。

「プロテイン(Protein)」はたんぱく質の化学名です。ギリシャ語の「第一番目」を意味するプロストに由来し、その名の通り身体の土台となると同時に、血液やホルモン、酵素なども作る大切な栄養素です。

筋肉、骨、内臓諸器官、血液、ホルモン、酵素、そして皮膚や毛髪に至るまで全てたんぱく質で出来ています。それ以外にも、他の栄養素と結びついて必要な場所まで運ぶ、キャリアタン白という働きがあります。他の栄養素をしっかり摂っていても、たんぱく質が足りない為に必要な場所で使えない、という事が起こります。

例えば、ビタミンAと結びついて運ぶたんぱく質をRBP(レチノール バインディング プロテイン)と言い、同じ様に、カルシウムと結びついて運ぶたんぱく質をCBP(カルシウム バインディング プロテイン)と言います。

これは、体内でその栄養素を使う場所に運ぶ為だけに作られた、いわば専用車みたいなものです。ですから、当然たんぱく質が不足すると、身体の至る所で不具合が出て来ます。

 

異化と同化


人間の身体は体タン白(体内のたんぱく質)の「異化と同化」を繰り返しながら生命を維持しています。人間の身体は60兆個もの細胞で組織されていて、常に古い細胞が壊され(異化)、新しい細胞に作り替えられて(同化)います。成長期には同化が異化を大きく上回って進み、高齢になってくると異化が同化を上回って進み始めます。

体タン白の「異化=同化」の状態であれば健康を維持できますが、たんぱく質の摂取量が不足しますと「異化>同化」となり、これが続けば身体の不具合(=病気) につながる訳です。

身体の構成成分の60%はたんぱく質無しに作る事は出来ないと言われていますから、手術や放射線照射などで徹底的に細胞を破壊してしまわない限り、適切な栄養補給によって健康回復、維持、スポーツパフォーマンス向上が可能です。筋肉はもちろん、怪我の回復や、骨、軟骨も作り替えが可能なのです。

しかし、たんぱく質は摂り溜めが出来ません。口から摂ったたんぱく質は、体内でまずアミノ酸に分解され、器官や臓器、組織、細胞、血液など必要な所に運ばれ使われます。カロリーとしての余剰分は全て脂肪という形で体内に貯金されます。面白い事に、食べた余剰カロリーは、栄養素の質(たんぱく質、糖質、脂質)に関係なく、全て脂肪で貯蓄されるのです。

でも残念ながら、使う時には体脂肪をたんぱく質には換えられません。ですから、昨日ガッツリ肉を食べたから今日は野菜だけで良いわ、とはいかないのです。

その日に必要なたんぱく質が身体に入ってこなければ、大事などこかの部分、例えば筋肉や骨、赤血球中のたんぱく質などを壊してリサイクルするのです。毎日摂取するたんぱく質が貴方の必要量に満たなければ、いくら練習をばっちりやったとしても、競技パフォーマンスはだんだん下がり、ひいては怪我の元になるでしょう。
 
健康な身体をキープするには“異化=同化”の維持が不可欠!
1日あたり体重1kgにつき1〜1.5g必要
例)体重50kgの人の場合、1日50〜75gのたんぱく質が必要

身体が必要とするたんぱく質の量は、体内での、利用率や日々の精神的ストレス(プレッシャー等)および身体的ストレス(筋力トレーニング等)によって増加する。

異化=摂取した食物から、エネルギーを産生および身体の中で消化すること
同化=摂取した食物から必要な組織を作ったり、エネルギーを貯蔵したりすること
各消化酵素が正常に産生・分泌されていれば、高分子であるたんぱく質も分解され、小腸で吸収される。しかし、ストレスや疾患によって消化酵素の産生・分泌が低下するとたんぱく質の消化・吸収が阻害される

『たんぱく質の低分子化=負担の少ない消化吸収』

分子量:炭素の質量(12)を基準とし、分子の質量を相対的に表した量。たんぱく質の分子量は、10,000以上である。

たんぱく質 高分子(ポリマー)
 ↓
ペプタイド 高分子が分解された状態
 ↓
アミノ酸 低分子(モノマー)
 

ポリマー:多数のモノマーが結合した化合物
モノマー:化合物が結合する際の基本単位

なぜ摂取不足が起こるの?


この飽食の時代に栄養の摂取不足なんてまさか?とお思いの方もいらっしゃるでしょう。しかし、私がこの仕事をして多くの方々の血液データを拝見して、たんぱく質が充足していた方は10%にもなりません。そのくらい、たんぱく質の必要量は皆さんの思っている以上に多いのです。

成長期の子供や運動選手を除き、一般的には体重1kg当たり約1gのたんぱく質の摂取が毎日必要です。体重70kgの人なら毎日70g強のたんぱく質を摂取する事が必要、という訳です。

 

アスリートに必要なたんぱく質の量


以前オリンピック選手を調査した報告では、海外の選手は体重1kg当たり約2.5g 〜3.5 gのたんぱく質を摂取していましたが、同じ報告で日本選手はなんと1.5gという結果で、唖然とした事を覚えています。1.5gという数値は、一般の人と摂取量がそう変わりないという事です。

この報告は10年以上前の話です。最近では国内でもサプリメントが普及し、栄養を重視するコーチ、選手も増えてきましたから、そんなにひどい事はないと思います。読者の皆さんなら、運動レベルにも依りますが、体重1kg 当たり2g〜3g の範囲が良いのではないでしょうか?

至適量を見つけるには、まず可能であれば体重1kg当たり2g〜2.5 gを摂取しながらトレーニングをしてみて下さい。パフォーマンスが上がり、体脂肪率が上がらなければその量が貴方の至適量といえるでしょう。体脂肪率が上がれば、余剰カロリーがあるという意味ですから、摂取量を0.5g程度減らして様子を見てみましょう。

 

プロテインスコアとDNA




食品に含まれるたんぱく質について説明しましょう。
たんぱく質を多く含む食品の代表は、動物性なら肉、魚、卵でしょう。植物性なら豆、豆製品(豆腐、納豆、きな粉)などです。

たんぱく質はアミノ酸の集まりでその形を作っています。自然界には多くのアミノ酸がありますが、人間に必要なアミノ酸は約20種類あります。牛には牛の、マグロにはマグロのアミノ酸の配列があり、この配列順は親から貰います。

この配列順の設計図をDNAと言います。貴方には貴方のDNAがあり、牛を食べた時、まず牛の配列を切って、それを貴方用の配列順に並べ替えをします。だから貴方が牛を食べても牛にならないのです。

この配列順を並べ替える作業をすると、牛にとっては完壁でも、人聞にとっては「余り」が出ます。この「余り」を除いた、使える部分を得点で表したのが、「プロテインスコア(又はアミノ酸スコア)」です。



表を見て戴ければ分かりますが、動物性の食品はプロテインスコアが高いのですが、植物性では低いです。実は、植物性の食品にはメチオニンというアミノ酸がありません。先程の配列並び替えの時、人聞は必ず最初にこのメチオニンを必要とします。この事から、メチオニンは別名「開始アミノ酸」と呼ばれています。人間に必要不可欠なメチオニンの無い植物性食品はその為、スコアが低いのです。

最近の植物性プロテインのサプリメントは、メチオニンを添加してスコアを100になる様にしている物が殆どです。

余談になりますが、その意味でも植物性のタン白食品を食べる場合は、動物性のタン白食品を一緒に摂取するとスコアが上がり、たんぱく質を有効に摂取出来ます。例えば、冷や奴を食べる時には鰹節をたっぷり掛けるとか、肉豆腐やすき焼きなどもそうですね。私の大好きな沖縄料理のゴーヤチャンプルは、豆腐と豚肉、卵とゴーヤを妙めるといったたんぱく質豊富なメニューでお勧めです。

ここで牛肉を例にとってご説明しましょう。生の牛肉100g中には、約20gのたんぱく質が含まれています。しかし、加熱調理しますと約半分のたんぱく質は壊れてしまい(たんぱく質は熱により壊れると白っぽくなり、固くなります)、使えなくなります。

先程プロテインスコアについて説明しましたが、牛肉のプロテインスコアは80です。
20g × 0.5 × 0.8 = 8gとなります。
100gの牛肉を加熱調理して食べると、約8gの使えるたんぱく質を摂取出来ます。

仮に体重70kgの選手が牛肉だけでその日に必要なたんぱく質をまかなうとすれば、一日当たり約1.8kgもの肉を食べなければならない事になり、現実として不可能でしょう。

この事からも、食事だけでたんぱく質の一日の必要量を摂取する事が、いかに大変かをご理解戴けるでしょう。サプリメントというツールを上手く使いこなして、必要量を確保して下さい。

殆どの日本人が、一日当たり10g〜30 gの、たんぱく質の摂取不足状態にあると言われています。実年齢以上に老化の進行が見られる人、練習を頑張っているのにパフォーマンスの上がらない人は、長期に渡る栄養欠損、特にたんぱく質の摂取不足が原因かも知れません。

 

たんぱく質摂取の難しさ




プロテインパウダーを摂取するとお腹が張る、という方がいます。ステーキを食べたら胃がもたれた、という経験をお持ちの方もいらっしゃいますよね。

これと全く同じで、大量のたんぱく質を一度に摂取したら、消化の能力が付いていけない人はお腹が張ったりガスが出たりするでしょう。その場合は一回の摂取量を減らし、日内の摂取回数を増やす「少量頻回」という方法で摂取してみて下さい。

例えば、毎食後、食聞の10時や15時、練習後、寝る前等、何回かに分けて少しずつ摂取してみて下さい。

また、胃酸の分泌や胃の状態に問題がある場合もあります。ヘリコバクター・ピロリ(通常ピロリ菌と呼ばれている)の抗体検査や、胃酸の状態をみるペプシノーゲンなどの検査をしてみる事をお勧めします。

たんぱく質の補給が必要な人ほど消化吸収能力が低下していて、意外に十分量を吸収出来ていません。同じ量を食べていても、吸収力の高い人と、そうでない人とでは、身になる量が違うという事です。

また、市販されているプロテインパウダーの多くは、たんぱく質の分子量(=アミノ酸の鎖の長さ、又は分子の大きさ)が非常に大きな物が使われています。このような、大きな分子量の補給食品は、消化吸収されにくいので小腸内に溜まり、お腹の張りやガス発生の原因を作ります。購入の際には、たんぱく質の分子量の大きさにも注意しましょう。分子量が1万以下の低分子加工の物をお勧めします。

ガスが出る方について、もう一言。
たんぱく質が胃や小腸で、上手く消化されないまま大腸に送られると、大腸の悪玉菌の餌になり、メタンガスを発生させます。これが臭いガスの原因です。

少量頻回で摂取する事はもちろん、腸内細菌嚢を整える為に野菜や海草類、キノコ類を沢山食べる事や、ダイエタリーファイバーの機能性食品を利用する事も良いでしょう。また、腸内の善玉菌を育てるラクトフェリンも有効です。

プロテインを摂り始めたら太ってしまった、だから「プロテインは太る」と言う方がいます。正確には太ったのではなく、体重が増えたのではないでしょうか?体重増加がイコール太るですか?

たんぱく質の補給で、今まで不足していた筋肉や骨などの体組織が充実し、その結果、体重が増える事があります。「太る」とは体脂肪が増えた事を言い、体重増=太るではありません。

それについては「なぜ摂取不足が起こるの?」の項で述べています。プロテインは脂肪分解酵素(リパーゼ)の主成分となりますので、太るどとろか減量に不可欠の栄養素です。
 
  • 星 真理(ほし まり)
    栄養整合栄養医学協会認定 分子栄養医学管理士
    栄養学の専門家として老若男女を問わず、一般人からトップアスリートにいたるまで、あらゆるニーズにも対応した栄養指導/栄養セミナーを個人、競技チーム、学校、企業を対象に行っている。
    著書「アスリートのための分子栄養学」(体育とスポーツ出版社)

    分子栄養学(正式名称:分子整合栄養医学)
    Ortho-Molecular Nutrition and Medicine
    ノーベル賞を2つ受賞した米国人生化学者ライナス・ポーリング博士(1901〜1994年)が、栄養学と医学とを融合させて研究し、分子整合栄養医学として確立した栄養医学。

  • アスリートのための分子栄養学
    2014年3月31日初版1刷発行
    著者:星 真理
    発行者:橋本雄一
    発行所:(株)体育とスポーツ出版社


[ アスリートのための分子栄養学 ]

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