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血液検査の必要性とは?血液検査の結果から分かる栄養状態



普段の生活で体調不良があって病院へ行くと、血液検査をされる事があります。データの状態で「なになに病です」、なんて病名がつけられたりします。

現在、病院で行われている血液検査は、この「病名の確定」が目的として行われているものが殆どです。それ以外には健康診断として行いますが、こちらも「病気でない事の確認」に行っています。

第1章で、KYB運動についてお話しましたが、このKYB運動の基本にあるのが血液検査です。
しかし、通常の病院で行われている血液検査より遥かに多い項目を調べる事で、詳しい身体の状態が分かります。

さて、人間の身体にはホメオスターシス(生体恒常性)がありますが、ホメオスターシスを簡単に説明しましょう。

 

ホメオスターシス


ホメオスターシス(生体恒常性)は、“身体をいつも良い状態に保とうとする力”です。これは自律神経、ホルモン、免疫がバランスよく保たれる事で維持されていて、この状態なら病気になりにくいと言えます。

例えば、お風目に入っても北風に当たっても体温は一定です。これは、ホメオスターシスが体温を一定に保とうと、血管を広げたり収縮したりして調節している訳です。この様に、ホメオスターシスは身体の至る所にあり、そのお陰で人聞は簡単に重病になったり死んだりしない様になっています。

しかし、栄養欠損、ストレス、加齢(年齢が増える事)、感染などによりこのバランスが乱れ、ホメオスターシスが乱れると、病気になってしまいます。例え病気になったとしても、栄養補給して栄養状態が改善したり、免疫が向上すれば、病気の悪化を防いだり、体力の回復につながります。

つまり、病気にかかっても、また病気にならない為には、自律神経、ホルモン、免疫のバランスが大切であり、それには栄養欠損の改善が大きく関与している訳です。これはまた、健康管理の人と体力の限界に挑戦するアスリートでは、そのレベルは全く違うとも言えます。

血液は身体の情報の宝庫であり、異常が見つかれば病気や怪我を未然に防ぐ事が出来ます。ホメオスターシスが乱れると、血液成分は変化し、データにも如実に現れます。

しかし、データの変化と自覚症状は必ずしも一致しません。今、身体の中で何が起こっているのかを知るためにも、例え自覚症状が無くても、詳しい血液検査が必要なのです。

血液検査は、身体の壊れ具合(どこにどの程度の障害があるか)や、時にはどんな治療方法が必要か、などを見つける事が出来ます。逆に、病気でない事を確認する為や、どんな栄養がどのくらい不足しているのかも知る事が出来ます。

 

“基準値”って何?




血液検査をすると、よくデータの横に「基準値」というのがあります。それに入っているかいないかで、一喜一憂していませんか?

実は基準値は、検査をする検査会社や検査機関でそれぞれ違います。それは、それぞれの検査会社が、独自に健康と思われる人たちを集め、その人達の検査結果の平均値から決定しているからです。

同じ数値でも、こっちの検査機関では基準で、あっちの検査機関では病気、ではおかしな話です。という事は、基準値に入っているから健康とは限らないし、入っていないから不健康、又は病気だとも限らない、と言えます。その位、実は健康であるという数値には個人差があると言えます。

つまり、基準値は個人の正常値を示したものではないのです。
その為、分子栄養学研究所では、項目によって多少「基準値」と外れたデータの判読の仕方をしています。

 

フェリチンという項目


私がお勧めする項目に、フェリチンというものがあります。通常はガンの進行状況をみる項目としてしか余り知られていません。

しかし、分子栄養学研究所では、研究所が独自の血液検査を始めた25年程前から、貧血、特に鉄欠乏性貧血の検査項目として見て来ました。

鉄欠乏性貧血は、鉄というミネラルが足りなくなる事で起こる貧血です。恐らく、貧血の中で最も多くの人がかかっている種類の貧血でしょう。

しかし、頭痛やめまいだけでなく、鼻や喉の不快感、洗髪時に髪が抜けやすい、寝起きが悪い、むくみや湿疹、イライラするなど、貧血の症状はとても多彩であるため、症状の原因が貧血であるとは見逃されている事が多いのではないかと思います。

鉄欠乏性貧血は、特にマラソンや持久系のスポーツでは不可欠の検査項目です。しかし、貧血とはエネルギー不足の状態ですから、持久系だけではなく、どんなスポーツでもパフォーマンス低下の原因や怪我の元になります。

欧米に比して肉類などタン白質の摂取量が低い日本人、特に女性の鉄欠乏性貧血は顕著で、研究所が過去に指導させて戴いたマラソンチームや有名メダリストランナーでさえも、ひどい鉄欠乏性貧血の人が沢山いました。

ここで誤解してもらっては困るのは、貧血でも走れるという意味ではありません。一度や二度の試合なら無理もきくでしょうが、長くトップアスリートを続ける事は困難だし、仮に頑張れたとしても、怪我に泣く事になる、という事です。

日本の女子マラソン選手寿命が短いのは、これが一番の原因ではないかと、私は密かに思うのです。読者の皆さんは、持久系のスポーツとは余り関係ない方もいらっしゃるでしょう。

しかし、先ほどからしつこく言っていますが、貧血は万病のもとであり、怪我の元でもあります。調子が上がって来たと思ったら怪我に泣く、なんて事になってしまいかねません。せっかく始めたスポーツで、健康になるならともかく、不健康になってしまっては元も子もありません。

貧血、特に鉄欠乏性貧血には十分、気をつけて下さい。
貧血については、また別の章で述べますので、ここではそれ以外の事についてお話ししていきましょう。

 

何項目の検査?




分子栄養学研究所が、健康状態を知る上で推奨している検査項目は、全部で最低61項目あります。

通常の健康診断では、保険適用の項目で、だいたい10〜13項目です。しかし、少ないピースを集めたジグソーパズルで全体像を推察するのは、難しい事です。

可能なら、たとえ保険適用外の自費検査であったとしても、身体全体を知る上で、是非調べてほしいものです。

 

どのくらいの間隔で検査するの?


時々、「血液検査?ああ、何年か前にした事ありますよ」という話を聞きますが、検査のデータは、あくまでその日の“点”です。データによっては一日の中で変動するものもあります。何度か定期的に検査を重ねる事で、点と点がつながり、その人自身の“ 基準値”が見えてくるのです。

また、検査結果から栄養不足が見つかれば、栄養補給をしてデータがどのように変化したか、確認する必要があります。

血液は約3〜4ヶ月で入れ替わります。今ある血液は、ずっとあなたの血管の中を流れているのではなく、約3〜4ヶ月したら別のものと(殆どが)入れ替わっているのです。だから約3〜4ヶ月、遅くとも6ヶ月後を目安に再検査をして再チェックをして下さい。

健康診断の観点からは、自覚症状や目立った悪いデータのない状態で、6ヶ月からl年に一度は血液検査をするのが良いでしょう。

大会に出場する選手なら、大会前とオフシーズンではストレスの状態、練習量、摂取栄養摂取量や体重など、環境や体調が大きく変わりますから、時期を決めて検査するのが良いでしょう。早期の怪我を予測したり、改善に必要な栄養補給の量も分かりますから、自信を持って大会に臨めると思います。

定期的な検査は、健康を自分で知り自分で管理する、健康自主管理(つまりKYB)運動にとって必要不可欠なものです。早期の病気の発見や、病気・怪我の予防、今摂取している栄養の量が的確か、身体の回復より練習量が多すぎて身体が壊れていないかなど、重要な情報がたくさん隠されています。

血液検査は、これまでの「今、病気かどうか」を見る検査から、将来の健康の可能性を見たりする、健康管理に欠かせないものになって行くと思います。

 

科学をミカタに!


栄養状態は、その人の気分ややる気や、時には性格にさえも、実は深く関わっています。血液データは、それをかなり正確に読み取る事が出来るツールだと思います。

しかし、“科学の子”と言われた鉄腕アトムが誕生して、もう随分経ちましたが、国内スポーツの世界はまだまだ科学的とは言えないと思います。

科学をもっとミカタに出来れば、例えばドーピングに代表される様な危ない物に頼る考え方も、もっと減らせられるのでは、と私は考えます。
 
  • 星 真理(ほし まり)
    栄養整合栄養医学協会認定 分子栄養医学管理士
    栄養学の専門家として老若男女を問わず、一般人からトップアスリートにいたるまで、あらゆるニーズにも対応した栄養指導/栄養セミナーを個人、競技チーム、学校、企業を対象に行っている。
    著書「アスリートのための分子栄養学」(体育とスポーツ出版社)

    分子栄養学(正式名称:分子整合栄養医学)
    Ortho-Molecular Nutrition and Medicine
    ノーベル賞を2つ受賞した米国人生化学者ライナス・ポーリング博士(1901〜1994年)が、栄養学と医学とを融合させて研究し、分子整合栄養医学として確立した栄養医学。

  • アスリートのための分子栄養学
    2014年3月31日初版1刷発行
    著者:星 真理
    発行者:橋本雄一
    発行所:(株)体育とスポーツ出版社


[ アスリートのための分子栄養学 ]

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