フィジークオンラインをご覧の皆さんこんにちは、パーソナルトレーナー&柔道整復師の三橋忠です。
前回「トレに影響する日頃の癖」の8つのポイントをあげましたが、今回はその1つの「頸椎の回旋」に関して、解剖学、エクササイズ含めて細かく紹介していきます。
このポイントに関しての考え方は、例えば「頸椎の回旋が悪いから、頸椎周辺の筋肉を鍛え、回旋を良くする」だけではなく、「頸椎の回旋を悪くすることに関与している“影響”を排除し、回旋を良くする」と多面的に考えて、部分だけの評価でなく、「木を見て、森を見ない」ことがないように、必ず全体のバランスを考えた身体作りを心がけてもらいたいです。
※今回は8つのポイント以外の全身の各部分は、正常反応していることを前提でお話します。
頸椎の回旋
頸部の基本的な動きの、屈曲、伸展、側屈、回旋の大部分は、後頭骨・環椎・軸椎の間で起きます。そのためこれらの部位は重要な矯正ポイントになってます。
頸椎の回旋に関しては、回旋の約50%は環椎(C1) と 軸椎(C2)の間で行われ、残りの50%は 第3頸椎(C3) 以下の各椎体間で分担して動きます。つまり上位頸椎の可動性の確保が重要になってきます。
回旋の大部分は第1頸椎(C1)と第2頸椎(C2)の間で40〜45°可動しており、下部頸椎でも40〜45°です。
筋肉で考えていくと、主に胸鎖乳突筋、前斜角筋、中斜角筋、後斜角筋などの、外からも見える筋肉の正常反応から見ると、本人も自覚しやすいです。その中でも、回旋に関して胸鎖乳突筋の正常な働きが重要になってきます。
胸鎖乳突筋の回旋
首の筋肉は、約5kgもある重い頭を支えています。胸鎖乳突筋は左右耳下から鎖骨中央まで延びた筋肉で、正面から見たときに首の太さが分かる筋肉です。
胸鎖乳突筋の筋肉の作用の特性としては、右に回旋した時に左の胸鎖乳突筋が働き、左に回旋した時に右の胸鎖乳突筋が働きます。
つまりは首の片側回旋の癖が強いと、片側の胸鎖乳突筋だけ発達してしまい、逆に反対側の筋肉は脆弱になる可能性があります。日頃の頸の回旋で向きずらい側がないかチェックしましょう。
直接鍛える種目としては、「リバースレスラーブリッジ」や「ネックフレクション」で直接鍛えることができますが、上記の回旋の癖を踏まえて少しずつトレーニングしましょう。
頸椎の傾き
そして回旋しずらくなる一番の原因は、頸椎の過剰な前傾です。所謂ストレートネックです。
ストレートネックとは、頸椎の生理的前湾角度30度以下の頸部の状態をいいます。正常な人の頸部の前湾角度は30〜40度です。
主に日頃のデスクワークや不良姿勢が原因ですが、トレーニング中にその点も気をつけてエクササイズを組んで行かないと、症状を助長する可能性があります。
頸部だけでなく、脊柱、肩甲骨、骨盤、足底のアライメントも考えて調整します。(植木の枝(頸部)が前方に曲がるのは、根本の植木鉢(脊柱)の傾きが原因なのです。)
調整エクササイズ
◆「ストレートバービハインドネックプルダウン」
(1)写真のようにバーを頭の後ろで挙げ下げする動作で、頸部が前に出ないように気をつけ、胸郭を広げて、踵に重心を置き、やや後ろ重心でエクササイズを行うようにします。
(2)この時点で頸部が前に出てしまったり、代償動作で頸部が動いてしまうようでは、脊柱全体や肩甲骨の調整をする必要があります。その後のウォーミングアップで、「ビハインドネックラットプルダウン」を加えるのも有効です。
◆「ストレートアームチェストフライONストレッチポール」
(1)ストレッチポールの上に乗って身体の左右差を整えるエクササイズをします。ストレッチポジションで床に手をつけた時に、片側は手がつくが、片側は手がつかないなどの確認をします。
(2)コントラクトポジションでは、ストレッチポールに対して肩甲骨に偏りがないか確認します。※筋力に合わせて軽めのダンベルでも行います。
◆「胸郭・肩関節周辺のパートナーストレッチ」
(1)実際に肩関節に触れて左右差がないかチェックします。筋肉量、可動域のたわみなど、左右差を自覚しやすいです。
(2)必要であれば「PNF」、「関節モビライゼーション」を加えたりします。
以上の様な調整エクササイズで、立ち姿勢・頸の動きの確認をして、必要であればもう一度、各調整エクササイズを繰り返して行くと、身体全体の動きがスムーズになり、結果、頸部を動かさずとも頸部の回旋がしやすくなります。
最後に、首のトレーニングを始めて、首に違和感や腕のしびれなどの症状を感じた場合は、首のトレーニングを中断しましょう。場合によっては、無理なトレーニングなどによる頚椎椎間板ヘルニアの症状かも知れません。きちんと専門の医療機関を受診してください。