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パワーリフティング界のレジェンド!三土手大介の強さの秘密に迫る!(1/3)



ボディメイクに欠かせないトレーニング方法の一つが“ウェイトトレーニング”。特にコンテスト出場者は、誰もが必ず通る道と言えよう。

しかし、ウェイトトレーニングを続けていて、こんなことを思った経験はないだろうか。

一定の重量を超えると、身体のどこかに筋肉痛とは異なる痛みが生じる。いくら筋肉に効かせようとしても、バルクアップに繋がらない。つまり、自分の身体の使い方やフォームが分からないという悩みである。

そんな悩みを抱えるトレーニーに知っていただきたいのが「レッシュ理論」である。この理論は、自分自身に合った身体の使い方を理解しトレーニングを行うことで、より安全で確実にパフォーマンスを上げようという考えである。

この理論に基づいたトレーニングを学ぶことができるのは、東京都府中市にあるウェイトトレーニングに特化したジム「No Limits(ノーリミッツ)」。

ジムのオーナーを務めるのは、全日本パワーリフティング選手権 優勝20回、全日本ベンチプレス選手権 優勝18回という偉業を成し遂げた三土手 大介(みどて だいすけ)氏。

さらに彼は日本だけでなく、世界大会である「世界パワーリフティング、世界ベンチプレス、ワールドゲームズ、アーノルドスポーツフェスティバルPRO BENCH」という計4つのタイトルを獲得している。

今回は、そんなパワーリフティング界のレジェンド、三土手氏のウェイトトレーニングの経歴やパワーリフティングの強さの秘密に迫る。


ウェイトトレーニングとの出会い


― ウェイトトレーニングを始めてどのくらいになるのですか。
13歳の時、空手の補強のためにウェイトトレーニングを始めました。かれこれ30年くらいになりますね。


― ウェイトトレーニングを始めたきっかけは空手の補強だったのですね。
そうなんです。小学四年生から二十歳まで空手をやっていました。なぜ二十歳で空手をやめたかというと、二十歳でパワーリフティングの全日本選手権に初優勝したんです。

そこで、空手とパワーリフティングの二つを天秤にかけて、パワーリフティングの方がより上を狙えると思い、それからはパワーリフティングという競技に集中しました。


― ウェイトトレーニングの魅力はなんですか。
ウェイトトレーニングを始めた頃って、徐々に重量が上がっていくじゃないですか。同時に筋肉がついて、身体も変わっていきますし。自分の身体がより軽く扱えるようになっていくんです。

ウェイトトレーニングをすることによって、力がつき、動きがよくなり、身体が変わる。そういう点が自分にとって一番の魅力であると感じています。


― スポーツ経歴を教えて下さい。
子供の頃から、空手、水泳、剣道、野球、サッカーなど色んなことを親がさせてくれました。なかでも空手は、小学四年生から二十歳まで10年ほど続けていました。その他に、柔道も中学生の時に三年間やっていました。


― 競技それぞれにおける身体の使い方という点で共通点はありますか。
はい、実は全て繋がっています。一流アスリートの方って、何をやってもそつなくこなす方が多いじゃないですか。あれは、彼らが“自分の身体の使い方の基本”というものを知っているからなんです。

競技が変わった時に、競技の基本を覚えるのではなく、自分がこんなふうに動いたら身体をコントロールできるということを知っているんです。そこでルールを知ったら「あぁ、こういう感じね」ってすぐ動けるんですよ。

だから私は、「運動神経が良い=自分の身体を自在に操れる」ということは、自分のイメージした動きをすぐに出せるということだと思います。


― ベンチプレス、スクワット、デッドリフトにおいて、スタートの重量はどのくらいだったのですか。
生まれて初めてバーベルを触ったのが高校一年生の時でした。入学の決め手となったのが、その高校に「フィットネス同好会」があったからです。高校見学に行った際に、ウェイトトレーニングの設備がとても充実していることを知り、「よし、ここに入ろう」と決めました。

そして、15歳の時。人生初のベンチプレスはめちゃくちゃなフォームですが、65kgで10回という記録でした。そこから3カ月後には100kgになり、高校二年生のときには165kgくらい挙げていました。

スクワットは高校二年生になってから始めるようになり、一ヶ月後には180kgくらいまでいきましたね。

実は、初めてパワーリフティングという競技を知ったのは高校三年生の時でした。全日本高校パワーリフティング選手権に出場しようと思ったんです。

パワーリフティングはベンチプレス、スクワット、デッドリフトの成功試技の合計重量をトータルして競う競技なので、「デッドリフトもやらなければいけない」と必然性にかられ、生まれて初めて挙げたのが200kgでした。


― 種目によって気を付けるべき点はありますか。(ベンチプレス、スクワット、デッドリフト)
ベンチプレス、スクワット、デッドリフトそれぞれの種目において、どのようにすべきか細かく説明するとなると3時間〜4時間かかります(笑)

ですが、どの種目においても自分の身体の使い方を理解することが重要です。当然目的によって方法が変わってくることも事実です。例えば、ボディメイクのためなのか、パワーをつけるためなのか、ダイエットをするためなのか。

ですがここで私が言いたいのは、基本的な動きを行う前に、自分の身体の使い方をしっかり理解していないと、例えその先にいったとしても身体が壊れてしまう恐れがあるということです。


― やみくもに重い重量を持ち上げるだけでは身体を壊すリスクがありますね。そういった方にアドバイスはありますか。
そうなんです。例えばスクワットですが、フィットネスクラブで教えてもらう時やウェイトトレーニングの本で載っているのは、「膝が前に出ないように膝を固定してお尻を後ろに引きましょう」という方法があるじゃないですか。これって、およそ半分の人ができて半分の人ができないんですよ。

もともと人間にはできる動きとできない動きがあるわけで、例えばフィジークオンラインをご覧の皆さまそれぞれの体育やスポーツ歴のなかで、言われてすんなりイメージしてできることと、自分はできるけど友達ができないことや、友達はできるけど自分はできなかったという経験があると思います。

そういうわけで、全ての人が同じ方法に当てはまるかといったらそうではないんですよ。


レッシュ理論に基づいたトレーニング




― ご自身がオーナーを務めるジム「No Limits」では、レッシュ理論に基づいたトレーニングを学べるということですが、どのような理論なのですか。
「レッシュ理論」という理論の中に、「5ポイント理論」「4スタンス理論」、4スタンス理論を応用した「リポーズ」というストレッチとは異なる柔軟体操があります。


― では、まずレッシュ理論について詳しく教えていただけますか。
レッシュ理論というのは、どちらかというと引き算の理論です。習慣による癖など余分なものを取り除き、本来の自分の身体にあった動きを取り戻すことを目的としています。

例えば、「100kg超えると腰が痛くなるんだよね」とか、「ベンチプレス60kgくらいだと肩が痛くなるんだよね」などの悩みがあったとします。その重さになったときに身体が痛くなるのであれば、そこまでの重量しか対応できない身体の使い方をしているということになります。

さらにテクニックの上塗りで、痛くなるから角度を変えようとか、テクニックをこうやってみようかとか、そういうふうにテクニックを重ねて重ねて、どんどん上書きしてフォームを作っているけど、結局それでもある程度まで行くと行き詰ってしまう。テクニックでカバーできる部分というのは限界があります。

この意識のズレについて、より分かりやすい例えがあります。
効き手や効き足があるように、効き目というのもあるのですが、条件をつけると自分の効き目を簡単に調べることができます。

(1)手の甲を自分の顔側に向けて両手を開きます。
(2)左右の親指と人差し指をクロスするように近付けると小さな円ができます。
(3)そのまま手を前に伸ばし、その小さな円の先の景色を覗きます。

その時、どちらの目で円の先の景色を覗いていますか。使っている目が効き目となります。

この条件で、自分の効き目とは反対の目を効き目にするとなると、手をずらすか自分がずれないと、円の先の景色が見えません。その“ずれる”ということが、フォームで言うと崩れているということになります。

ずらした中で使って、それが慣れてきて上書き保存をされると、それが当たり前のように感じてしまうというのが、作り込んだ人の現状なんです。

だから、そういうものを一度取り払って、自分本来の身体の使い方を素直に出していけば、もっと安全に確実にパフォーマンスが上がってきますよ。というのが、レッシュ理論の一番伝えたいことなんです。


4スタンス理論によって、誰もが必ず4タイプのいずれかに当てはまる。あなたはどのタイプだろうか?


― 次に、4スタンス理論について詳しく教えていただけますか。
4スタンス理論は、軸の作り方が4タイプに分類でき、自分の身体の使い方を理解して、最適なフォームをセッティングしたうえで動きましょうというものです。

この理論は、自然に表れるものなので、自分の中で意識せずとも既にあるものなんです。

例えば、自然につま先側に重心が落ち込む人はAタイプであるとか、かかと側がBタイプ、内側が1タイプ、外側が2タイプといった具合に4タイプに分かれるんですけど、それも自然なものなので、自分はこのタイプだ!ってあまり思わないんです。

例えば、誰かに追いかけられた時に、走り方を気にしながら逃げないですよね。走って逃げることが目的で、手段は気になりませんよね。一方、マラソンをする時に腕の振り方などの走り方は気にしますよね。

このように、「立つ」「歩く」「走る」などの動作は、本来は無意識にとる動きです。ですが、やってはいけない動き・いい動きを知っておくと、自分のナビゲーションとして役に立ちます。

人間って自分の脳が自分の身体を騙しますので、習って良いと感じたら、例え良くない動きでも一生懸命やるわけですよ。

そうすると、トレーニング中に肩が痛くなったり、膝が痛くなったりするのは、痛みが蓄積されているからなんですよね。ですが、本人はどうして痛くなるのかが分からない。

痛くなる前の段階、つまり本来の身体の使い方が違うから、痛みの原因が蓄積されて症状によって表れるというのがだいたいの人の痛みの出方なんです。

4スタンス理論に出会う前、自分でも、自分のフォームと違うフォームがあるということは分かっていたんですよ。この人にはこう伝えても上手く出来ないということは分かっていたけど、それが一体なぜなのかは分からなかったんですよ。

それで、この理論を知った時に全てが繋がって、「だからこうなのか」と納得しました。そこで、自分も4スタンス理論の世界に入って行きました。

4スタンス理論とは、型にはめるというイメージではなく、その人が本来持っている動きを引き出してあげることを意味しています。

それぞれの特性(タイプ)に合った自由な動きをするために、その形を最初にセッティングしましょうとか、軸を最初に作りましょうということになります。


― 次に、5ポイント理論について詳しく教えていただけますか。
タイプが違っていても全員に共通した理論が5ポイント理論になります。5ポイント理論は意識して構えたりするということ。4スタンス理論はその先の動きを無意識で行うということです。

日常動作は、自分が無意識のうちに勝手に行っていることです。でも、その身体の使い方というのは、実は自分のタイプによって変わってくるんです。

例えば、水を飲むという動作ですが、全員が水を飲むことに変わりはありませんが、持ち方や手首やひじの動かし方は異なります。書くという動作も同じです。書くという動作は一緒ですが、書くためのペンの持ち方、身体の動かし方が違うのです。

ウェイトトレーニングのスクワットにおいては、膝の位置やしゃがみ方を指摘されますよね。では、スクワットでは指摘されるけど、「椅子におかけ下さい」と言われて、椅子に座る時のしゃがみ方を指摘されたことはありますか。

実は、椅子に座る時の自然なしゃがみ方と、スクワットのしゃがみ方は人間の身体でいうとイコールなんです。

このように、目的と手段は別です。その基本ができてから、4タイプに分類することができますよ。という説明が先ほどお話した4スタンス理論なんです。


― 最後に、リポーズについて詳しく教えていただけますか。
リポーズとは、ストレッチとは異なる柔軟体操です。身体の骨格を整える柔軟体操ですが、自分の骨格が正しいポジションになったり、柔らかい体幹部を得られます。柔軟性が出ると、その人の持っている特性というのがより自然にひき立ってきます。

例えば、身体のどこかを怪我している、あるいは硬いなどの悩みがあるとします。骨格が歪んでいたりしたら、本来の自分のフォームというのは出にくいので、そのために一度身体をリセットして、整えるのがリポーズというものになります。

ヨガやピラティスは、決まった形がありますが、リポーズは同じ格好をしても、A1とA2のポーズでは見た目が異なるのも特徴の一つです。


― 理論に基づいたトレーニングによって得られることは、具体的にはどのようなことですか。
例えば、野球の「グリップを握る」という動作のときに、ではゴルフだと指先からしっかり握って、フィンガーグリップで握ると教わるじゃないですか。ウェイトトレーニングなんかでも、ラットマシンをやるときに小指側から握るとか、特定の握り方は種目毎に異なります。

ですが、本来バーベルを握る動作も、拳を作る、かばんの持ち手を握る、通勤時に吊革を握る握り方も、「握る」という自分の身体の基本的な使い方は同じでなければなりません。そこの基本が分かっていないと、種目毎に基本をいちいち覚えなければいけないんですよね。

それで、本来の自分の動きと異なる形の握り込みをすると、それが原因で腱鞘炎になったり、肘や肩が痛くなったりします。いわゆる作り込みという動作が入ってくるので。

だから、自分自身の身体の取扱説明書を作るということになります。その説明書を濃厚なものにしていく作業を繰り返すことによって、新しいことを習ったとしても、自分に合っているか合っていないかなんて、すぐに判別がつくし、先生はこう言っているけど、自分の場合はこういうふうに身体を使ったほうが、上手く動くんだな。というのがすぐ分かるんですよ。身体は先生とは違うので、鏡越しに同じ動きをしてもダメなんです。

また、コツを掴む瞬間って自分の感覚であるじゃないですか。コツの語源って「骨」って書くんですよ。だから自分の身体の骨格の使い方、骨の動かし方を理解したときにコツを掴んだということになるんですよ。

それはつまり、筋肉ではないんですよ。筋肉は骨格を動かす初動のために使うものなんですよ。

だから私は、パワーリフティングにおいて、筋肉で挙げていると思われがちなんですけど、私がイメージしているのは骨格です。骨格でどうやって挙げるかということを考えています。トップアスリートの皆さんも骨格で身体を動かしています。

面白いことに、中量級くらいまでのパワーリフターやベンチプレッサーは、筋肉隆々の選手よりかはスラっとした選手の方が強いんですよ。トップの人はみんなそんな身体つきなんです。

だから、筋肉で挙げているわけじゃないんですよ、彼らは骨格で挙げているんです。

全然筋肉がないのに、「この人妙に強いな〜」という人っているじゃないですか。それは、身体の使い方をちゃんと理解しているからなんですね。骨格を動かすための補助が筋肉ですので。だから筋肉がメインになってしまうと、最大のパフォーマンスが出なくなってしまいます。


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  • 三土手 大介(みどて だいすけ)
    No Limits代表・レッシュマスター級トレーナー
    一般社団法人レッシュ・プロジェクト理事
    1972年8月26日生まれ
    神奈川県横浜市出身
    120kg超級
    4スタンスタイプ「A2」

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