2016年6月4日アメリカ・ニュージャージー州ティーネックにあるマリオットホテルで開催される『BEV FRANCIS ATLANTIC STATES CHAMPIONSHIPS 2016』。
大会の名称にもなっている、ベブ・フランシスという女性は、アメリカの創成期を築いたレジェンダーと称されるほどの実力を誇るトップビルダーでありパワーリフター。
そして彼女の夫、スティーブ・ワインバーガー氏は、全米トップレベルのコンテストプロモーターとして名高く、なおかつIFBBのトップジャッジ。さらにボディビルの最高峰と呼ばれるオリンピアのヘッドジャッジを長年務めており、今年のアーノルドクラシックのヘッドジャッジにも抜擢された。
そんな彼がプロモートする今大会は、昨年500名のエントリーがあるほどアメリカ東海岸の中で最も大きなアマチュアコンテストとして名を馳せており、ゲストポーザーも毎年豪華なキャスティングが実現する。
今年は昨年同様、MR.OLYMPIA 5連覇という驚異的な成績を残すフィル・フィース。過去には、今年のアーノルドで祈願の優勝を果たしたカイ・グリーンもゲストポーザーとして登場した。
そんな権威ある大会に挑むのは、一般社団法人NPCJの選手3名だ。昨年のNPCJグランプリシリーズで年間チャンピオンに輝き、今大会出場サポート権を勝ち取った大山大輔選手。そして、一般参加として挑戦する池田晋太郎選手。さらに、NPCJの理事を務める堺部元行選手だ。
そこで、今回のニューヨークツアーで団長を務めるNPCJ会長の庄司氏、サポートを行う事務局長の石崎氏を交えて、今大会に向けての意気込みをお伺いすると共に、NPCJが目指すコンテストへの思いを熱く語っていただいた。
国内とは異なる海外コンテスト
― まず、今回挑戦するカテゴリを教えていただけますか。
大山 フィジークのオープンといって身長別に別れているクラス(クラスC)と、ノービスといういわゆる新人クラスの2カテゴリに出場します。
池田 フィジークのクラスBとノービスの2カテゴリに出場します。
堺部 僕はボディビルに出場します。
― 今回出場する大会は当日にならないとエントリー数が分からないと伺いました。初めての海外大会への挑戦ですが、お気持ちはいかがでしょうか。
大山 まあ、不安も多少はありますが、一番は楽しむことだと思っています。今できることをしっかりやって、ステージの上で楽しむことが一番じゃないかなと考えています。
NPCJの使命“日本人が公正にジャッジされるコンテストを発掘する”
― なぜ海外コンテスト挑戦の舞台として『BEV FRANCIS ATLANTIC STATES CHAMPIONSHIPS 2016』を選択したのですか。
堺部 私自身この大会に2年連続出場し、今年で3年目の出場となります。昨年は会長の庄司が同行し、コンテストの様子を実際に目で見て体感し、NPCJのコンテストに出場する選手にも海外コンテストを体験して欲しいという思いもあり、今回ニューヨーク大会ツアーという形で挑戦します。
昨年はNPCJがチームとして10名ほどミスターロサンゼルスに挑戦しました。そこで、西海岸・東海岸様々な情勢を見てきて、日本人選手が公正にジャッジされるコンテストを探そうと思いました。西海岸は政治的な問題やプロモーターの絡みがあり、日本人選手の評価に厳しいと分かったんです。
そもそもNPCコンテストは、プロモーターの意向もありますし、誰でも出場できるわけではないんです。アメリカ国籍を持つアマチュア選手がプロになるためのコンテストなんですよ。だから日本の選手が参加して、アメリカ人選手の順位を下げてしまうと、アメリカ人の地位が脅かされるという一説があるとも言われているんです。
だからフロリダのコンテストには出場できませんし、私自身過去にミスターカリフォルニアの大会に出場しようと事前にエントリーしていたのですが、当日いざ現地会場に到着したら出場を拒まれ、出場せず帰国するという苦い経験を味わったことがありました。
だからこそ、必ず事前にプロモーターと連絡を取り、IFBB PROの山岸選手にも確認をしてもらい、コンテストに出場できるという確約があるコンテストのみ参戦します。それが、我々NPCJの選手サポートなのです。
日本人としてエントリーはできますが、結局現地でアメリカのIDがないと出場できないというケースも出てくるんですよ。だからこそ、行けば必ず出場できる、なおかつ日本人選手も公正に評価されるコンテストを選択することが我々の使命だと考えています。
そういう意味で、会長の庄司と事務局長の石崎とバックアップ体制をとって、選手をサポートするために一緒に行くのです。
― フィジークに出場する大山選手と池田選手には、どのような思いで挑んで欲しいですか。
堺部 とにかくワクワクしてもらいたいと思っています。みんな期待感を持っていますから。我々はNPCJを発足させた時から、アメリカを見据えてコンテストを開催していこうという思いがあったので、皆さんに期待とワクワク感を与えたいです。
やっぱり国内コンテストとは違う、本場の世界を見せてあげたいんです。海外コンテストに挑戦したら、それがパイオニアになるわけで、その次、その次と繋がるじゃないですか。
我々の世代がボディビルを始めた頃(20年ほど前)、アメリカに対する憧れを抱いていたように、それをもう一度再現させたいという気持ちが純粋にあったので、今回大山選手が行くということももちろんそうですけど、それに追随して池田選手が行きたいと言ってくれた声を僕らは素直に受け止めています。
先日セミナーのために初来日した
マーク・アンソニーも言っていましたが、リアルなアメリカを見せてあげたいと。その思いというのは、会長の庄司を筆頭に我々は常々言っているので、それが僕らのポリシーだなというふうに思っています。
だから、いずれ10人・20人という規模で行けるようにしたいと思っているし、当然山岸プロにもアイリス・カイリにも言っているのは、自分たちのコンテストを開き我々がバックアップをして、日本人選手20〜30名で日米交流ができるようなコンテストをNPCJとNPCができたらいいねという話をしています。
そう意味では、5〜10年見据えて我々はコンテスト開催をしています。
― 昨年各地7大会に出場した大山選手、最初から海外コンテストに出場することを見据えていたのでしょうか。
大山 やっぱり、もし可能性があるんだったら海外に挑戦したいな。という気持ちはありましたね。
― 昨年11月のレジェンドクラシックが終わってから、どのような準備をしてきたのですか。
大山 自分の弱点部位をどれだけ改善できるのかということを意識してやってきました。もちろん、カラーリングやオイルアップというのもすごく重要になってくるので、その辺を含めて考えてきましたね。あとはやっぱり、11月のレジェンドクラシックよりNPCのニューヨーク大会ではさらに良いコンディションで行かないといけないと強く思っていて、3月くらいから減量を開始しました。
― 池田選手はBLAZE OPENがフィジークのデビュー戦となりましたが、今回なぜ海外のコンテストに出場しようと思ったのですか。
池田 若い頃にアメリカの団体でプロレスをやっていたんです。それで、まだ山岸選手が日本にいる時代に同じジムでトレーニング方法を教わるなど、お世話になっていたんです。
それで、今年の1月にロサンゼルスのフィットネス・エキスポを訪れた際に、現地のジムで山岸選手と一緒にトレーニングさせてもらう機会があり、その時に体を見てもらって、「挑戦してみろよ」というお声をいただいたんです。
実は、昨年から堺部さんのブログをずっと拝見していて、フィットネス・フィジーク・ボディビルに関して興味があったんです。それで、昨年くらいからNPCJの海外挑戦ツアーがあることを知っていて、ずっと興味があったんです。
でも当時はきっかけがなく、なかなか行動に移せませんでしたが、趣味程度にトレーニングは続けていて。仕事が忙しいと自分の中でも言い訳をしていたんですね。
だけど、せっかくトレーニングをしているんだから、大会に出場してみようと決心して今回挑戦することに決めたんです。
コンテストはとにかく楽しむことが大切
― 日頃から身体を鍛えていても、コンテストに挑戦するということは一つのハードルですよね。しかし、コンテストに出場しようか迷っている方にとっては励みになるのではないでしょうか。
堺部 僕は今までアメリカの様々なコンテストに参加したり観戦したりしてきましたが、アメリカ人って自分に自信を持っているじゃないですか。日本人が俺は、私はこんなんだから出場できないというのは日本的な発想でしかないと思うんですよね。
そもそも自分で自分を精一杯表現する競技なので、それで勝とうが負けようが、それは自分の自己満足だから。コンテストは自分のためですよ。
そこで、俺なんか、私なんかが出場して、という考えがあること自体が日本のフィットネスが閉鎖されたフィットネスだと思うんです。
そこを我々が打破するために、池田選手のようなコンテスト出場経験がない人が行かなければいけない。なおかつ、そういうところで池田選手がどこまでやれるのかと、恐らく皆さん大山選手と池田選手の結果を見ているんですよ。二人の結果を見て、勝てそうだったら行こうと思う人が絶対に出てくるんですよ。
でもそうじゃないんですよ。初めて挑戦する人が行って、仮に打ちのめされて帰ってきて、でも楽しかったね。ということが僕はボディビル、フィットネス、コンテストだと思う。
だから先ほど大山選手が「楽しんできます」と言ったのは、その通りだと思う。直前まで死ぬ気で努力はするけど、当日は楽しまなければ行く意味がないし、僕はそういう意味で、NPCJで可能な限りのサポートをするんです。
BLAZE OPENでお披露目されたNPCJチームのジャージ
そして今回、チームの士気を高め合おうという気持ちを込めてNPCJチームのジャージを作りました。チームNPCJとして小さなファミリーですけど、みんなで向こうに行って楽しんでくる。そして、我々NPCJは日本国内にフィットネスを広めていこうと会長庄司の元々の考え方でもあるし、そこに選手をいかに誘導できるかですね。
庄司 昨年僕がニューヨークとロサンゼルスに行った際に、今の日本のコンテストと違うなと思ったんです。日本のコンテストってどうしても、選手一人だけが舞台に立ち、観客に知り合いがいない状況があったり、あとは選手をライバル視していたりすることがあるんだけど、昨年僕が行ったニューヨークやロサンゼルスのコンテストというのは、一人の選手に対して選手団が30人くらいいるんです。村や町のヒーローをみんなで応援しに来るようなスタンスで、しかもみんな同じTシャツを着て一人の選手に対して声援を送っているんですよね。
そういうのって日本では遅れているなと思っていて、少なくとも今回僕らが同じジャージを着て行くということには、ステージ上では一人だと感じるかもしれないけど、僕らは観客席から同じジャージを着て、一人の選手に対して大きな声援を送る。そういう構図ってなんかいいな〜と思うんですよね。そうすることでチームという意味が出てくると思います。
だから、そういうような構図を日本のNPCJのコンテストでも、一人の選手とかいろんな選手に対してのチームができればいいなと考えています。同じTシャツって最初はダサいかなと思っていたんだけど、一体感というところでみんなで楽しむことができるコンテストになると僕は思っているんですよ。
― 日本のフィットネスは海外よりも10年遅れていると言われていますからね。現地で得た参考になる部分は、国内に取り入れ広めていただけるとありがたいです。
堺部 だから帰ってきて、大山選手と池田選手の二人がどうするかというところがポイントなんですよ。やはりほとんどの人が経験していないことを経験するわけですから。だからその時のトレンドのリーダーとして、自分たちが経験したことを伝達していって、仲間を増やしていかなきゃ意味がない。
特に二人とも家庭があってお子さんがいて、奥さんのサポートを受けながら家族の時間を犠牲にして行くわけだから。でも、そういうことをやろうと思ったらできるわけですよ。
普段から子育てに協力的だから、素直に「いってらっしゃい」って奥さんが言ってくれるかも分からないしね。普段やっているかどうか分からないけど、多分やっているんでしょうね。(笑)
大山 やっていますよ!(笑)
― 奥様からは、どのようなサポートをしてもらっているのですか。
大山 いや〜もうね・・・自分は子供が三人いるんです。だからそういう意味では、まず三人の子供を見てもらっているというサポートがありますよね。
あとは、食事の面でも、普段自分が作っている内容をだいたい把握してくれているので、これとこれを自分が仕事に行く間に作って欲しいという要望もやってくれるし。
やっぱり、減量するときはカロリーなども全部管理しないといけないので。変に油を入れたりとか、たんぱく質が多くなったりっていうのは控えたいので、これを何グラムでどういう風に調理してくれ!っていうと毎回そういうふうに作ってくれるので。そこらへん感謝しないとな〜と思っています。
― とても献身的な奥様ですね!
堺部 池田選手なんかはね、ホームトレーニーなんですよ。それでもアメリカに行けるんですから。大きなフィットネスジムに入会しなくても行けるんだから。
とにかく挑戦してみることが大切
― 最後に、今大会に向けた意気込みをお願い致します。
大山 先ほども言いましたが、直前まではやることをやってステージの上では最高に楽しむ。NPCJの大会に出場してきて思ったことはそれなんですよね。コンテストって楽しまないと出場する意味がないと思うんです。せっかく今まで自分がやってきたことを見てもらって、それが評価されて結果が返ってくると嬉しいじゃないですか。
それって暗い雰囲気でポージングするのと、自分が楽しんでいる姿を審査員や観客にアピールするのとでは全然違うと思うんですよ。見てる人も絶対違うと感じると思うので、そこはやっぱり楽しむ。ほんとそれだけなんですよね。どのステージに立つにしても自分はコンテストを楽しみます。
池田 自分は今まで、観戦する側のボディビルマニアだったんですけど、今回自分がステージに立つことになるので、大山さんと同じようにとにかく楽しみたいですね。大会まで残りわずかですが、必死に準備します。
堺部 僕は優勝することです。オーバーオールを獲ることが目標です。そして早くニューヨークのコンテストを卒業して、新たに海外コンテストを発掘したいです。まずは僕が実際に出場してみて、そのあとにNPCJのみんなを連れて行く。やっぱり最初はみんな怖いじゃないですか。僕は怖いもの知らずなので、とりあえず行けるところは行きたいですね。
韓国のコンテストに出場する人もそうですが、とにかく挑戦してみることが大切だと思うんですよね。我々としては、ボーダーレスに様々な団体と連携して、選手自身の考えでどのコンテストにも自由に参加できるようにしたい。
逆に僕らはそれをただ傍観しているだけでなくて、NPCJとしてサポートして、みんなが出場しやすい環境を作ってあげること。そうしていかないとボディビル・フィットネスって一過性のものになってしまうし、コンテストを開いても最後に何も残らず、結局最後は閉鎖的な世界になってしまうと思うので選択肢はいくつあってもいいかなと思います。
会長の庄司といつも言っているのは、我々が可能な限りサポートをする。だからこそ一般の人にも観戦しに来て欲しいんです。一生懸命頑張っている姿を見て、俺も、私もできるんだと自信を持って欲しい。
そうやって、自分が出場する前に一度観戦に来てもらって、我々がその中でモチベーションを上げて、皆さんとこうして海外コンテストに挑戦したいと考えています。