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- マドカ(齋藤 マドカ)
IFBBプロ
JBBFフィットネス委員
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- 中尾 尚志(なかお たかし)
JBBF審査委員長
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- 聞き手 : PHYSIQUE MAGAZINE編集人・中島康晴
■中島 先日の大阪オープンフィジーク大会、良い大会でしたね。正直、最初ということもあり、あまり期待はしていなかったのですが、本当に素晴らしい大会になりました。
★中尾 主管の大阪連盟もそう思ってました。最後まで集まるかな?って心配していました。でも、講習会をやっていくと徐々に盛り上がってくるのがわかりました。あとから、もっと大きな会館でやっておけばよかったと言っていました。
●マドカ 立ち見が三十何人もでるほどの大盛況でしたね。
■中島 フィジークとビキニの扉がようやく開かれ、これから爆発的に広まって行く予感がありますが、この動きはやはりおおもとにボディビルがあってのものだと思いますし、フィジークが広まるに従ってボディビルは衰退するという関係ではないと思います。ボディビルは入口のハードルが高いあまりにこれまでなかなか一般的には受け入れられない状況にありましたが、そういった意味ではフィジークが始まった今、ボディビル連盟としてもチャンスだと思います。
★中尾 ボディビルが専門化しすぎたんです。特に男子は、かなりのレベルでないと出られないですからね。でも、ジムやスポーツクラブでは自分の好きなようにトレーニングをしたい人が結構いるんですよね。そうすると脚だけ一生懸命やっている人はほとんどいないと思います。どうしても上半身が主体になります。そうすると必然的にフィジークのような身体が出来上がるんです。それでそういう人達が何か発表の場をもちたいとなると思います。
ベストボディは競技団体ではありませんし、それなりに試行錯誤もやっていますが、それ以外の他団体でもフィジークやビキニをやり始めた現状もあり、本家本元の我々が何もしないで手をこまねいていることはできないのです。
去年の全国総会からフィジークとビキニの全国大会の話は持ち上がりまして、今年3月の総会で決定した訳です。それでどこかでやらないといけないということで、いいタイミングだったのが先日の大阪オープンフィジーク大会です。
■中島 本当によかったです。ことし全日本レベルの大会を開催していただかないと雑誌としても困りますので、しばらくやきもきしていました。(笑)
★中尾 結果的には雑誌の創刊と合わせてタイミングよかったと思いますよ。さっきも言いましたが、ボディビルのハードルが高く専門化しすぎて、愛好者が出場できる部分が少なくなってきているんです。女子もそうですよね。ボディビルがああいう形になって、ボディフィットネスも結構レベルが高くなって、でもそんなに激しい減量はしたくない、でも日頃やっていることを発揮したいという人がいる。そういう意味ではフィットネスビキニというのはとてもよかったと思います。
これから本格的にJBBF主導で、この2つのカテゴリーを完成させていかないといけないです。たたき台は私が作りましたけど、まだまだ細部にわたって検討するところはあります。これは皆さんの意見も尊重して、よりきちんとしたものを作りたいと思うんです。それでいて日本連盟らしさ、ビキニにおいてはあまりエロに走らない、もう少しスポーティなものになるべく今一生懸命皆さんの力をかりて努力している訳です。大阪オープンをやったことにより見えてきたこともたくさんあります。それには現場でマドカさんみたいに見てきた人の協力も得なければならないと云うことです。そのぶんではマドカさんが随分活躍してくれました。
■中島 今、始まったばかりで、現実問題としてビキニの指導者がいないということがありますが?
★中尾 実際ビキニの競技をした人でないと説得力がないです。マドカさんみたいに自分がやってきて現場も見ている人が最適なんですが、我々として一番困るのが、YouTubeなどの映像の情報だけでつかんでいる人なんです。これが困るんです。そしてそれをすぐコピーするから。でも日本は日本で健全にこの競技を育てていかないといけないです。
リハーサル風景
■中島 そういう観点で、フィットネスビキニのサジ加減は大阪オープン大会ではどうだったのですか?
●マドカ 練習会とか講習会とかに来てくださった人であれば、こちらも「これくらいにして下さいね」と言えるのですが、来てない方も出場はしていたので、さきほどおっしゃってたように、映像から入っているのですね。
★中尾 それとやっぱり、失敗した人もいましたね。IFBBのプロはこうだからということで、最後まで自分流でやってしまった選手もいました。靴は必要以上に底が厚かったり、ビキニが小さすぎたりとか、必要以上におしりを強調したりとか。気持ちはわかるんですよ。海外の映像を見ているのですから。
●マドカ IFBBも観客を集める材料としてビキニを使っているということも実際あるので、とても難しい部分です。
★中尾
はっきり言ってね、IFBBにせよ女子のボディビルというのは行き着くところまで行ってるんですよ。だから新しいところに展開しないと開けないんですよ。そのひとつの過渡期としてビキニのようなカテゴリーが出てきてもそれは当然だと思います。
■中島 アメリカではプロのボディビルダーは良くも悪くも特別な存在として、崇められる傾向がありますが、メンズフィジークの選手よりもむしろビキニの選手のほうがそれに続く、特別な存在として位置づけられつつあるような気がしましたが、いかがでしょうか?
●マドカ 現状で言うとオリンピアのナイトショーにメンズフィジークは入れてもらってないんです。ナイトショーに入っているのはフィギュアとフィットネスとビキニで、フィジークはまだ入れてもらっていないので実際に現状ではそういうことになると思います。
★中尾 IFBBの男子ボディビルも一般のボディビルからクラシックボディビルそしてフィジークという新しい路線が出来てきましたよね。これを推して行くみたいですよ世界連盟は。ただ女子と同じようにあまりにもボディビルが専門化しすぎて、プロの部門で今話していますけど、こういう路線をやらないと大会での愛好者が減ってきてしまいます。
●マドカ ボディビルではアマチュアはアンチドーピングじゃないですか。でもプロは黙認みたいな感じじゃないですか。だから余計ナチュラルだったらフィジークの方にいった方が自然ですね。
■中島 やはりこの世界ではドーピング問題がとても重要なことですので、フィジーク・マガジンではアンチドーピングを訴えています。
★中尾 それを徹底してやらないと。ボディビルでは2路線あるでしょ。ショーアップする世界と競技団体としてアンチドーピングを徹底していくという。他アマチュアの方はお金にならないかもしれませんけど、最終的に支持されるのはこっちだと思うんですよ。プロのボディビルもいつまで続くのだろうな、という感じです。女子の場合は男性化してしまってドーピングから切り離せないですからね。
■中島 そう言った意味ではフィジークの路線が出てきたのも、あるべき姿なのかもしれません。
★中尾 そう、必然的に生まれた状況ですよ、これは。で、正直言いまして私この前、大阪で審査委員長としてやって、見てたら別世界見てるみたいな感じがしました。ボディビルを見てきたのは長いですよ。映像では見てましたけど、初めてあのような形で見て別世界でしたね。あーこんな世界もあったのかと。
■中島 その別世界というのは中尾さんから見て好意的に受け取られているのでしょうか?
フィットネスビキニ158cm以下級(左)2位・三船麻里子と(右)優勝・磯野かおる
★中尾 悪くはとってないですよ。これは生まれてきたのは当然だという印象はありましたよ。それと、見ていて良かったですよ、本当に。特にメンズフィジーク。フィットネスビキニの場合はまだ選択を迷っている選手がいる、ジャッジもそこまでまだ目が肥えていないです。
審査委員長なので、実際に審査はしませんでしたが、男子は理想的な形ができたと思っています。真ん中のクラスの有馬選手が勝ったということは。
でもね、私個人の意見ですが、フィットネスビキニは磯野さんが優勝すべきでなかったと思いますよ。僕がジャッジしたとしたら三船さんですね。そういう概念で進めてきているビキニというのは。ところが磯野さんが優勝したってことは、彼女はボディフィットネスでもトップクラスの選手なんです。
だから今回の結果を見たジャッジがどう思うかですよ。今後もボディフィットネスでも通用するくらいハードなカラダじゃないと通用しないのかな?という解釈があるかもしれません。磯野さんが悪いと言っている訳じゃないですよ。フィットネスビキニの要項にも書いてありますけど、あの日それに一番近いカラダということで、僕の考え方からすると三船麻里子選手なんです。それが各ジャッジミーティングをしていろんな話をして、その通りにならなかったし、それは僕の考え方だから、そうならなきゃいけない事ではないですよ。でも持ってる概念はそうでした。その辺がまだ選手も見る側もまだまとまっていないのが現状です。